語り合い、花火をして、かけがえのない時を過ごした陸安然（りく・あんぜん）と穆川（ぼく・せん）。「また明日」――そう言って去っていった彼の姿を、安然は涙を流しながら見送る。自室に戻り、穆川からの贈り物を眺める彼女の胸中には「明日になれば、あなたは私を嫌いになる」という言葉が渦巻いていた。深夜、安然は穆澤（ぼく・たく）のもとへ。今さら何の話があるのだといぶかしがる穆澤に対し、安然は告げた。「側室としてお迎えください」と…。

「私は、あなたの兄を愛し、大瀚（だいかん）の慶（けい）王殿下に嫁ぐの」。穆川（ぼく・せん）には、陸安然（りく・あんぜん）の言葉が到底真実とは思えなかった。しかし彼女はその発言を翻そうとしないばかりか、穆川にもらった腕輪まで放り投げて捨ててしまうのだった。打ちひしがれて地べたに座り込み、１人で酒をあおる穆川。そこへ穆澤（ぼく・たく）が。隣に腰を下ろした兄と語り合ううち、穆川は憤りと嘆きの入り混じった本心をぶつけ…。

陸安然（りく・あんぜん）は側室として穆澤（ぼく・たく）のもとへ輿入れした。その夜、いつになく優しく振る舞う穆澤は、ふいに自分が酒を飲まない理由を語り始める。幼き日の二皇子と、実の母が迎えた最期――それは、非情な策士たる穆澤が誕生するきっかけとなった、壮絶な物語であった。一方、まさに虎穴に入る思いで穆澤に嫁いだ安然も、悲壮な決意を固め、己の未来と引き換えに次なる一手を放つ。彼女は冬青（とうせい）に命じて、とある薬を準備させ…。

陸安然（りく・あんぜん）を傷つけた傲慢さ、そして、それとは知らずに賄賂を受け取ってしまった浅はかさを激しく叱責され、蕭驚雀（しょう・きょうじゃく）は罰として一晩中ひざまずくように命じられた。騒動を聞きつけた蕭映（しょう・えい）は妹のもとを訪れ、家宴（かえん）を開いて慶（けい）王府の女主人としての度量を示してはどうかと提案するのだった。そんななか、翊（よく）王が不穏な動きを見せているとの情報を得た穆川（ぼく・せん）は…。

蕭驚雀（しょう・きょうじゃく）の策略により、陸安然（りく・あんぜん）と穆川（ぼく・せん）は、慶（けい）王府の書斎に閉じ込められてしまった。穆澤（ぼく・たく）を伴って書斎に到着した驚雀は、勝利を確信して密かにほくそ笑むのだった。しかし、事態は思わぬ方向へと展開する。穆川の言い分を聞いた穆澤は、あっさり彼を帰し、安然にも下がるように命じたのだ。「なぜ２人を許すのですか？」――焦って食い下がった驚雀は、不用意な一言を漏らし…。

穆川（ぼく・せん）に刺された傷は、ケガの重さよりも深く陸安然（りく・あんぜん）を痛めつけていた。あの思いもよらぬ事件で、穆澤（ぼく・たく）の本性に気づいたのだとしたら、穆川にとってはよい機会だったと語る安然。不屈の心を持つ彼女は、早くも新たな策を練るのだった。次なる標的は蕭映（しょう・えい）――安然は、穆澤と腹心の彼が一枚岩ではないと見抜いていた。２人の仲を裂くために、彼女が冬青（とうせい）に命じたこととは…。

「斉（せい）王と陸安然（りく・あんぜん）を葬り去る手は、まだありそうだ」。穆川（ぼく・せん）謀殺に失敗した蕭映（しょう・えい）だったが、まだ諦めてはいなかった。彼は冬青（とうせい）に近づくと、兄の仇・安然を討とうと口説きにかかる。蕭映の動きを知り、不安げな衫越（さん・えつ）。しかし安然は、毅然とした表情で「弱腰で勝てる相手ではない」と答えるのだった。そんななか蕭驚雀（しょう・きょうじゃく）は、穆川から安然への秘密の手紙を手に入れ…。

穆澤（ぼく・たく）に伴われて、蕭映（しょう・えい）の位牌に線香をあげにきた陸安然（りく・あんぜん）。蕭驚雀（しょう・きょうじゃく）は「殺してやる」と叫んで彼女に襲いかかるも果たせず、穆澤に激しく叱責されてしまう。そんな驚雀が頼ったのは梁（りょう）統領――蕭映の忠臣である。「我らは、これからも蕭家軍です」。そう告げた梁統領に、驚雀は「ならば、ある者を殺してちょうだい」と返すのだった。あくる日、安然のもとを訪れた驚雀は…。

陸安然（りく・あんぜん）は、もう戻らぬだろう――そんな穆澤（ぼく・たく）の予想は、意外にも裏切られる結果となった。目の前に現れた安然を掻き抱き、安堵する穆澤。この時、神ならぬ穆澤には、安然の脳裏をよぎった光景を知る由もなかった。一方、打つ手を失った蕭驚雀（しょう・きょうじゃく）は、底知れぬ虚しさに襲われていた。そんな彼女に、ばあやが言う。兄の仇を討つ方法がある、と。「今度こそ、あの女を葬ってやる」。驚雀が向かったのは…。

年越しの夜に行われる燃灯（ねんとう）大典の場で、翊（よく）王が穆川（ぼく・せん）の暗殺を企んでいる。その動きを察知した穆澤（ぼく・たく）は、その計画を利用して謀反を成功させ、自らの野望を達成しようと策を巡らせていた。一方、慶（けい）王府の帳簿の管理を任された陸安然（りく・あんぜん）は、その内容に不審を抱く。大量に購入された花火から、火薬だけが抜き取られていることに気づいた安然は、今まさに始まろうとしている式典の場へと急ぐが…。

「目覚める頃には、すべて終わっている」。瞳を閉じて横たわる陸安然（りく・あんぜん）の傍らに腰掛けた穆澤（ぼく・たく）は、心の中でそうつぶやいた。逆賊の名を背負って生き延びるより、戦って命を散らす――そう決心した穆澤。そんな彼に、数々の戦を共にした忠臣たちもまた、最期の瞬間まで従うと声をあげるのだった。一方、兄の覚悟を知った穆川（ぼく・せん）は、皇宮へと取って返す。皇宮を守る兵と、穆澤の間に立ちはだかった穆川は…。【完結】

紫荊（ズージン）ホテルの見習いシェフ グー・シェンナンは、得意のまかない料理を作っていた際、目を離した隙に火を出してしまう。間の悪いことに火事を見つけたのはホテルの買収にやってきた正虹（ジョンホン）グループ社長のルー・ジンだった。その上、シェンナンは親友のシュー・ジャオディをだました男の車と勘違いして、ルー・ジンの車にイタズラまでしてしまう。

シェンナンの料理が気に入ったルー・ジン。専属シェフとなったシェンナンは正式なシェフの地位と昇給を上司に要求する。ジャオディとシェンナンの叔父ガオ・チュエンアンは、ホテルのスイートルームでシェンナンのお祝いをすることに。酔っ払ったシェンナンは隣室のスイートに泊まっているルー・ジンにお礼を言おうと、バルコニーを乗り越えるが…。

専属シェフの正体がシェンナンだと知ったルー・ジンは、次々に料理を注文して彼女を困らせようとするが、シェンナンは負けずに受けて立つ。彼女の料理を堪能し大満足のルー・ジン。ところがへとへとになったシェンナンは、今度は庭でルー・ジンをプールに突き落としてしまう。ルー・ジンは、災難続きには何かウラがあるのではと勘繰る。

とうとうクビになってしまったシェンナンは祖父の屋台で働かせてもらうことに。その頃、グルメすぎるルー・ジンは口に合う店に出会えず、ついにシェンナンのいる屋台へ。ところがそこで酔っ払い客がケンカを始め、投げつけた酒瓶がルー・ジンに当たってしまう。ケガをしたルー・ジンはこれまでの分も含めて料理で返済しろと迫る。

シェンナンの料理に魅せられたルー・ジンは、彼女から提示された高額料金を受け入れる。部下のモン・シンジエはルー・ジンがだまされているのではと気が気ではない。女性の扱い方をもっともらしく指南するシンジエ。だがそんなシンジエの心配をよそに、料理を通して２人は次第にいい雰囲気に。シェンナンはルー・ジンが近づいただけでドギマギし…。

シェンナンとルー・ジンの仲を怪しむチュエンアンは、ジャオディに電話をして怒りをぶちまけるが、ジャオディは相手にしない。そんな中、そそっかしいシェンナンはルー・ジンの寝顔を撮影しようとして彼の上に倒れ込んでしまう。その頃、ホテルには正虹グループ副社長のリー・マンがやってきていた。ルー・ジンは彼女の来訪に戸惑う。

階段を踏み外してケガをしたシェンナンに、ジャオディはルー・ジンとのキスのせいで悪運を引き寄せたのかもと言いだす。そんなシェンナンのもとに幼なじみのチョン・ズーチェンがやってくる。再会を喜び合う２人。その頃、卓（ジュオ）州でシェンナンのケガを知ったルー・ジンは台風で飛行機も欠航する中、彼女のいる蘇海（スーハイ）まで10時間の距離をタクシーで向かっていた。

ルー・ジンが仕事を放り出して蘇海に戻ったと知ったリー・マンは、シンジエに理由を探らせる。その頃、シェンナンは紫荊ホテルでまた働けることに。しかも新任の支配人はズーチェン。だがそこにルー・ジンの姿はなかった。やっと自分の気持ちに気づいたシェンナンは、スイスに戻るというルー・ジンのもとへスープを持って駆けつける。

シェンナンの料理に手厳しいダメ出しをするリー・マン。傷ついたシェンナンはルー・ジンの慰めも耳に入らない。ついルー・ジンに憎まれ口をたたいてしまうシェンナン。すると、なんとシェンナンの隣にルー・ジンが引っ越してくる。戸惑うシェンナン。そんな彼女をズーチェンが連れ出そうとすると、今度はルー・ジンがうろたえて…。

研修中のズーチェンとシェンナンが気になり見張っていたルー・ジンは、シェンナンに気づかれてしまう。シェンナンに私が好きなのかと問いかけられ、ルー・ジンは思わず自分の気持ちを告げる。その後、ホテルでは新しい主任シェフを選ぶコンペが開催されることに。準備に余念のないシェンナンのためにルー・ジンは味見を引き受ける。

ルー・ジンの母であり正虹グループ会長のジョン・ホンがスイスからやってくる。彼女はすでにシェンナンのことを調べ上げていた。ルー・ジンはそんな母にシェンナンを紹介することに。ジャオディとチュエンアンの特訓のおかげでそつなくジョン・ホンとの対面をこなしたシェンナン。そんな中、ホテルでは主任シェフの選考が行われるが…。

シェンナンと屋台の宴会にやってきたルー・ジンは地元の人々のパワーについていけず、疎外感を味わう。そんなルー・ジンに、チュエンアンはシェンナンが傷つくことになるなら別れてほしいと話す。翌日、ホテルに出勤したシェンナンは会長のジョン・ホンのための料理を準備しようとするが、同僚たちは誰も彼女に協力しようとしない。

市場に食材を仕入れにやってきたシェンナンは、いつものように値切り倒す。そんなシェンナンがほほえましいルー・ジン。それでもアパートに戻ってくると、なぜかぎこちない空気になる２人。翌日、ジョン・ホンがホテルにやってくる。ところがシェンナンはそのジョン・ホンの前で思わぬ失態を演じてしまう。窮地に立たされたシェンナンは…。

ジョン・ホンから食事に呼ばれたシェンナンは、行くべきか迷ってチュエンアンとジャオディに相談する。相変わらず適当なアドバイスをする２人。食事会当日、そこにはジョン・ホン以外にリー・マンやズーチェンの姿も。ルー・ジンとジョン・ホンの３人だけだと聞いていたシェンナンは当惑する。しかもその場で料理するよう命じられ…。

シンジエに気持ちを告げられ、まんざらでもないジャオディ。シェンナンとルー・ジンも２人きりで甘い時を過ごしていた。その頃、ルー・ジンの父、ルー・ミンティンは明庭（ミンティン）グループの役員会に臨んでいた。資金繰りが深刻になった明庭グループは融資を受けることに。ルー・ジンはそんな父の動きをリー・マンの報告で把握していた。

山荘で２人きりで過ごす予定がくるってしまったシェンナンとルー・ジン。翌日、２人は仕事の合間にスマホで愛を語り合う。ところがそこにシェンナンの祖父が倒れたと知らせが入る。慌てて駆けつけるシェンナン。入院することになった祖父だが、空き部屋がなく困っていたところ、特別室に入院していたルー・ジンの父が部屋を譲ってくれる。

病院にやってきたジョン・ホンは故事を引用してシェンナンにルー・ジンと別れるよう迫る。疲れ果てたシェンナンは、心配して来てくれたズーチェンの前で思わず泣き崩れてしまう。その頃、危機に陥った明庭グループの役員会には、ルー・ジンの弟であるルー・ジェンが出席していた。事業に関心のない彼の様子に、役員たちはあきれた表情を浮かべる。

やっと再会したルー・ジンとシェンナン。だがジョン・ホンの言葉を思い出したシェンナンは彼を拒絶する。訳が分からず困惑したルー・ジンはチュエンアンに相談する。シェンナンもまたチュエンアンを頼りにしていた。２人の仲を応援したいチュエンアン。一方、ジョン・ホンは相変わらず２人の交際に反対していた。ルー・ジンは説得を試みるが…。

シェンナンの祖父から背中を押され、うれしく感じるルー・ジン。その頃、ジャオディはシンジエと過ごしていた。貧しかった幼い頃の話をしながら、シンジエとの距離を縮めていくジャオディ。シェンナンもルー・ジンと共に幸せなひと時を過ごすが、何気なくウェディングドレスを試着した際、ルー・ジンはぎこちない態度を見せる。