六ちゃんは毎日、「どですかでん、どですかでん」と言いながら、架空の電車を運転して街を一周する。六ちゃんをはじめ、この街には変わった人達が大勢住んでいる。シトロエンの廃車に住みつく乞食の親子や、我が子ではない五人の子供を必死になって育てる職人の良さん。貧しいが一生懸命に生きる愛すべき人達だ。
黒澤監督初のカラー作品。画家出身の監督は色に対する感覚も人一倍敏感で、その実験的とも言える色使いは当時驚かれた。自らセットの背景に雲の絵を描いてみたり、カメラの前にマジックインキで色を塗ったガラスを置いてみたりと、数々の大胆な試みで心なごませるメルヘンの世界を構築し、映像寓話を作り上げた。
1970年/日本/140分
監督:黒澤明
キャスト:頭師佳孝、田中邦衛、菅井きん、加藤和夫、伴淳三郎、芥川比呂志、松村達雄