ある朝、フランス地方都市の海辺に変死体が上がった。手足を縛られ溺死、なぜか鼓膜が破られている。現場に急行したケンプ警部に20年前の悪夢のような記憶が甦る。「鼓膜破り」と呼ばれる連続猟奇殺人犯。毎週金曜日に繰り返される殺人事件を担当したが、犯人を挙げられないどころか、同僚の刑事が巻き添えで殉死、そのまま事件は迷宮入りしてしまった。なぜ、20年後の今、同じ犯行が繰り返されたのか? 死体の発見者は精神科医のエレーヌ。彼女と会った帰り道、橋の上でケンプは何者かに襲われ海に突き落とされる。何とか海から這い上がった彼の目の前の世界は、その一瞬前の世界とはがらりと変わっていた。やがて彼は気づかされる、ここは20年前、1989年の世界なのだと。しかも「鼓膜破り」による最初の殺人が行われたその日。犯人を追っているのは20年前の若き自分。未来から来た自分だけが、その捜査が失敗し悲劇的な最後を迎えることを知っている。彼は自分の記憶を頼りに、今度こそ犠牲者を守り犯人を白日の下に晒そうと決意する。しかし歴史を捻じ曲げることは至難の業だ。いくらあがいても第二、第三の犯行を防ぐことができない。しかも、事件に首を突っ込むうちに、自分自身が最大の容疑者として、若い自分から追われる身になってしまう。最後に彼が頼ったのは、20年後に新たな事件の目撃者となる、若き精神科医エレーヌ。「鼓膜破り」による最後の犯行が実行され、仲間の刑事が殺された悲劇の夜が迫っている。果たしてケンプは未来を変えることができるのか?
2013年/フランス/101分/日本語字幕版
監督:ジェルミナル・アルヴァレス
脚本:ジェルミナル・アルヴァレス
キャスト:ジャン=ユーグ・アングラード、メラニー・ティエリー、フィリップ・ベロド、ジャン=アンリ・コンペール