由美は、震災で何もかもを失い、今は福島県いわき市の叔母の工務店に一人身を寄せていた。心に傷を抱える由美は、少しは外に出なければと叔母に促されるように小さな飲み屋で働くことになる。店の名前は小料理屋「杉谷」。店主の杉谷には謎めいたところがあった。彼は、記憶をすべて失い、山の中で発見されたのだ。失踪届も出されていなかったため、彼はどこの誰ともわからない。はっきりしているのは、“手”が料理をしていたことを覚えていることだけ。8年が経ち、今では小さな小料理屋を任されるまでになったが、福祉課の木村をはじめ、あたたかな人々に囲まれながらも、彼の心はいつも怯え、自分が何者なのかわからない孤独を抱え込んでいたのだった。傷ついた魂を持つ杉谷と由美。ふたりは、やがて“月”と“波”がおたがいを引き寄せ合うように、その心と体を寄り添い合わせるようになるのだが・・・。
2017年/日本/124分 R18+
監督:越川道夫
脚本:越川道夫
キャスト:井浦新、黒川芽以、山田真歩、諏訪太朗