庶民文化が花開く江戸時代は文化文政の頃。伊勢屋の放蕩息子・若旦那の巳之介は、今夜も遊びに行こうといそいそと通りかかった甲州屋の前で、妙なものを見てしまった。甲州屋の掘の上から出てきた黒装束姿だった。その黒装束の後を尾けると、黒装束は火の番小屋に入るやするすると着物を脱ぎ出した。何とそれは女、しかもとびっきり上等のいいおんなだった。巳之介はたまらず女に飛びかかるが、後から来た相棒の女に頭を殴られ気絶してしまう。
二人組は、お艶とお杉、関西から来た女盗賊だった…。その手口は狙った店にお艶が妾となって近づき旦那に睡薬をきかせ、その隙に蔵の金を盗み出し何食わぬ顔で旦那の床につく、そして翌日にはドロン…、という寸法だ。このなんとも色っぽい手口で甲州屋をおとした二人は、次なる獲物をたらふく屋に決めた。
一方の巳之介はお艶の美貌に一目惚れ、遊んでいる最中でもお艶の夢を見る始末…。