天才棋士の中国人青年吉流(よしりゅう)は、さらなる囲碁の修練のため東京にやって来た。仕事が見つからず囲碁もできないまま二ヶ月が過ぎたとき、道に散らばってしまった囲碁を一緒に拾ってくれた老婆・五十嵐君江と知り会う。君江は野菜を入れた箱を背中にしょって千葉から東京に通う行商をしている。実は彼女が高名な女流棋士であることを吉流が知るのはずっと後のこと。吉流は、君江とその孫の翔一と家族のような関係を築いていき、少しずつ日本人や日本社会に馴染んでいく。君江の厳しさのなかに、実は深い思いやりが満ちていることを、吉流は知るようになる。