『真実の底にあったのは、漆黒の絶望と、純白の嘘。』
藪の中で、男の死骸がみつかった。男は、胸を一突きに刺されて殺されていた。
やがて、検非違使の前に三人の証言者が集められる。
悪名高き盗人・多襄丸は云う。
「わたしの太刀は二十三合目に、男の胸を貫きました。」
男の妻・真砂は云う。
「わたしは夫の胸へ、ずぶりと小刀を刺し通しました。」
殺された男・武弘は云う。
「おれは小刀を手にとると、一突きにおれの胸へ刺した。」
奇妙に食い違う証言が、すべての真実を覆い隠し…。