ある朝、警視庁特命係の狭い部屋に出勤前の2人を待つ1人の男の姿があった。元警視庁特命係、現警察庁長官官房付の神戸尊。杉下右京にとっては懐かしい、そして甲斐享にとっては見慣れない顔。きっかけとなったのは、「馬に蹴られて男性死亡」と見出しに記された小さな三面記事だった。東京から300キロ離れた太平洋に浮かぶ鳳凰島という聞き慣れない島で起こった、一見ありふれた事故としか思えない記事。尊が特命係を久々に訪れたのは、その事故を手がかりに特命係をその島に潜入させて、妙な噂が絶えない島の実態を調査させるという、警察庁次長甲斐峯秋からの密命を受けたからだった。「確かめてみたくありませんか?」。尊は2人をそそのかし、鳳凰島への経由地となる八丈島行きの航空券2枚をデスクに置いて特命係の部屋を出ていく。気乗りしないまま、八丈島から小型艇に乗って鳳凰島へと向かう特命係の2人。そこはある実業家が個人所有している島で、島内では元自衛隊員たちが訓練のために共同生活を送っていた。2人を事故現場へと案内するグループのリーダー神室司と高野志摩子。右京と享は、表面上は穏やかに、しかし、あからさまに「招かれざる客」として島の人々に迎えられていた。事故で亡くなったのは、島での訓練に一時的に参加していた予備自衛官の会社員だった。当初、事故調査は島へと潜入するための口実に過ぎなかったが、右京は現場の調査で持ち前の嗅覚と洞察力を発揮。それは「事故」ではなく「殺人事件」に違いないとの確信を深め、極秘に鑑識課米沢守に連絡をとって証拠をつかもうとする。一方、警視庁内でも新たな動きを見せ始めていた。享の父親、峯秋の働きかけによって、右京と享を東京に連れ戻すという名目のもと、捜査一課の伊丹憲一、三浦信輔、芹沢慶二が特命係の後を追って島へと送り込まれることになったのだ。特命係、捜査一課、そして鑑識課米沢。いつもの面々が島で再会し、事件の鍵を握る決定的な証拠を得て島の宿舎に戻ろうとした時、迷彩服に身を包んだ特殊部隊が彼らに襲いかかった。その計算され尽くした襲撃は、島で右京や亨が見た訓練中の元自衛隊員たちとは明らかに異なる手法のものだった。彼らを襲ったのは一体何者なのか? そして、事件の真相の先にあるこの島に隠された秘密とは一体何なのか? 外界から完全に閉ざされた孤島=巨大な密室での事故調査は、やがて殺人事件捜査へと変貌し、さらには防衛省、国の権力者たちが暗躍する得体の知れない大きな謎の真相へと突き進んでいく。