モロッコ最大の都市、カサブランカ。美容師のサミアは臨月のお腹を抱えながら、仕事と寝る場所を求めてさまよっていた。モロッコでは未婚の母はタブーである事から、彼女を見る人々の目は冷たく、故郷で暮らす両親にも頼る事が出来ない。行くあてのないサミアだったが、一度は断られたパン屋に招き入れられる。パン屋の女店主アブラは、自身が女手ひとつで娘を育てている環境から、サミアの窮状を見かねたのだ。一晩の寝床を得たサミアは翌日、お礼を告げて去ろうとするが、もう何日か泊るよう、アブラから留められる。未婚の妊婦を保護する事は、世間体が悪いのだが、それでも彼女を見捨てる事は出来なかったのだ。居候を許されたサミアは、アブラと娘のワルダに少しでも感謝を伝えたく、得意のパン作りで恩返しをしようとするのだが…。