都内郊外のキャスティング会社で働く男・佐田紀夫、30歳。彼は交際三年目になる恋人・田辺茉莉と、穏やかな毎日を送っていた。ある夏の日。紀夫が家に帰ると、窓から強い夕陽が差し込んでいた。焦げるようなその日差しを目にした瞬間、紀夫は奇妙な感覚に襲われる。気付くとそこにあるはずの茉莉の姿は無く、代わりに見知らぬ若い女がいた。困惑する紀夫に、女はここに住むために来た、と無茶苦茶なことを言う。透き通るような白い肌のその女は「マリ」と名乗り─突然失踪した恋人を探しながら、別人との奇妙な関係に迷い込んだ男を描く、奇妙さと写実性を両立した恋愛劇。