音楽史に革命を起こし、今や不滅となったルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンがあらゆる不運に見舞われ続けながら、なぜ至上の喜びを歌う「第九」を完成させることができたのかを、謎の女を絡めてドラマティックに描く。19世紀始め。オーストリア帝国、首都ウィーンの劇場では、ルートヴィヒ(望海風斗)の指揮による新曲コンサートが行われていた。喝采が劇場中に響き渡り、コンサートは熱狂のうちに幕を下ろす。ルートヴィヒの楽屋を訪れたオーストリア皇帝は、最後に演奏された交響曲は世界の覇者を思わせたと讃える。周囲はその曲を皇帝に献呈するように促すが、ルートヴィヒは、この交響曲の名は「英雄」、ナポレオン(彩風咲奈)に捧げるものだと言い放つ。気鋭の音楽家として自信をみなぎらせるルートヴィヒは、美しい伯爵令嬢に求婚する。しかし彼女は身分なきルートヴィヒを裏切り、親の勧める貴族と婚約してしまう。伯爵令嬢はルートヴィヒに別れの言葉を告げるが、聴力に異変をきたし始めたルートヴィヒに彼女の声は届かない…。“さようならって、言っていたわ”―彼の前に現れた謎の女(真彩希帆)がそう告げた。ルートヴィヒだけに聞こえる不可解な女の声。その幻影から逃れたいと悶えるルートヴィヒの脳裏に、幼き日の不幸な記憶が襲い掛かる…。 作・演出:上田久美子
2021年/雪組/東京宝塚劇場/キャスト:望海風斗、真彩希帆、彩風咲奈