その日は、行人が藍蘭島に流れ着いてからの初めての雨。島では雨が降るとすべての仕事が休みになるという。時間ができた行人は、すずの代わりに朝食を作ってみた。成功とは言えない味だったものの、すずは気に入ってくれた様子。次はすずの提案で、将棋で遊ぶことに。思えば、外での仕事や遊びが多かった日々。家ですずと遊ぶのは、これが初めてのことだ。そう思いながら、いつもとは違う楽しさを満喫する行人。だが、すずは楽しみながらも、ときどき寂しそうな顔をする。それは、母親のことを思い出すからだった。彼女が昔、行方不明になってから、すずはずっと一人暮らしだった。特に雨の日は母親とたくさん遊んでいただけに、その思いがいっそう募ってしまうのだ。